データの偽造・捏造〜天文学編

 最近、韓国と日本で立て続けに起こったデータの偽造・捏造疑惑。さて天文学の世界ではどうだろうか?結論から言ってしまえばほぼ不可能だろう。何故ならデータをなるべく部外秘にして論文が受理されるまでは表に出さない化学や生物学、生化学、薬学、医学の世界と違って、天文学では観測対象は誰(研究者はおろかアマチュアさえ)の前にも平等に存在しているからだ。強いていうならば、北半球と南半球で年間を通じて観測できる天体が違うくらいだろうか?しかも世の中には、全くと言っていいほど同じスペックの研究用観測機器は存在しない。従ってある観測結果が過去の同種の観測結果を確実に再現するとは限らない(とは言いながら大抵の場合、誤差範囲で再現しているとも言える。問題はその誤差が大きいか小さいかだ!)。かの有名なNature(ネイチャー)誌に掲載された論文でさえ、天文学の場合は普通に覆されることが少なくない。
 これはNature誌に問題があるのではない。Nature誌に載るような研究結果は、そもそも多くの研究者が注目する類のものであり、彼らはこぞってその追研究を行いたがるものなのだ。追研究によって、新しいことが一般化されれば、そこからは天文学の新たなパラダイムが生まれる可能性がある。これによってまた一つ宇宙の謎が解明されるのだ。結局自然科学とは世界中で、ある結果の裏付けを取って前進していく学問体系なのだ。しかもほとんどの観測所で、取得後1年から2年程度で観測データが公開されてしまう。これではデータを偽造・捏造しても仕方が無い。そういう意味では天文学の研究世界は、他の分野とは違う性格を持っていると行ってもいいだろう。特にデータの公開、つまり不特定多数間のデータ共有など、他の自然科学の分野では有り得ないだろう。