やり直すなら二十歳まで

 前に「やり直すなら二十歳まで」と書いたが、これは決して
根拠が無い訳ではない。天文学に限らず自然科学の研究とは、
自然界の中に存在する現象を、幾つかの基本的な原理や法則を
用いて論理的に解明する、ということである。

 問題は、この論理的な思考が出来るか否かである。しかし、
論理的な思考は若いうちにトレーニングしなければ決してモノには
ならない。在野の自称科学者にトンデモ説を唱える人が多いが、
それはある程度の年齢までに論理的な思考をする訓練をしていな
かったためと考えられる。この手の人に「若い頃は天文学に憧れたが、
会社を退職してようやく独学で勉強できるようになった」という
ような人が多いのは注目すべき点であろう。私も職業柄、こういった方と
議論したことがあるが、先方は自分の考えのどこが論理的にオカシイか
理解できないのである。

 従って、心を入れ換えて、苦手な科目や嫌いな科目も勉強しよう、
という気になっても、それが二十歳を過ぎてしまってはおそらく
理解するには至るまい。せいぜい綺麗な天体写真を眺めて、うっとり
していた方が身のためである。二十歳を過ぎてから真面目に勉強し
はじめて、研究でメシが食えるほど、この世界は甘くない。